2013年6月1日土曜日

Random Access Memories: Daft Punk

Daft Punkの新作、Random Access Memoriesが先日リリースされた。これについて思う事を、自分自身でも衝撃を覚えておきたいため、ここに書き残しておく。


 
今回の作品で飛躍的に進歩をした点は、音の良さ、音のきめ細やかさだと思っている。

彼らの音は、音にいろいろ加工を施す反面、ノイズが発生し易い。それが前作までは一つの味としても捉えられていたと思うが、今回は違う。どの曲も、変わった音・不思議な音をたくさん使っているのに、驚くほどに音が"きれい"なのだ。音を作っている人は、みんなそこに感動しているはず。

あまりメロディーとしては大きな動かし方はしていなくて、基本的な音楽理論に沿った単調なメロディーの曲ばかり。それなのに、感動する。音のきれめに残る細かい残響音に、大きな衝撃さえ受ける。おそらく、あのケロケロしたロボットボイスをあれ程にきめの細かい解像度で聴かせた音楽家は、今まで存在しなかったのではなかろうか。

あまりに音がきれい過ぎて、その音楽の持つ魅力を見落としてしまいそうになるほど。本来異質なはずの音の存在が、自然過ぎるのだ。

音が良くなった事から、Daft Punkというアーティストが受け入れられるファン層に、大きな変化が起こる事が予想される。前作まではわりとハウスハウスした音とメロディー構成で、例えば年輩の方には受け入れられにくかったかもしれないが、今回の作品は音が上品になり、加工された不思議な音の素材達も一つの紳士的な楽器としてストレス無く聞く事が出来るため、言ってしまえばJAZZにも聞こえる。今回セールスが伸びている理由の一つにも、受け入れられる層の広がりという事が考えられると思う。

更にもう一つ、驚く点がある。それは、曲のシンプルさだ。

Daft Punkほどのビッグネームアーティストになると、次はどんな曲を作るのか、プレッシャーに負けそうなくらいに本人達の中で葛藤があるのは容易に予想できるが、そのプレッシャーに惑わされる事なく、メロディーとリズムは非常にシンプルにまとめられている。

アーティストの立場として考えると、あれ程に音をシンプルにまとめるのは、アラが見えてしまいそうで恐怖を感じる部分もあるのではないかと予想するが、その勝負にここまで著名になったタイミングで、あえて正面から立ち向かった本人達の勇気と技術には、本当に感銘を受ける。

アラが見えるどころか、メロディーラインがあまりにシンプルなため逆にどっしりと聞こえて、そこがたまらなくカッコいい。私を含め、元来からのDaft Punkファンは、ここに今回ヤられている方も多いと思う。

私の今後の制作活動にも、多かれ少なかれ影響を受けると予想される今回の彼らの作品だったが、もうしばらくこの素晴らしい音達に何も考えずに揺られていたい心境である。



さぁ、ここまで読んで頂けたあなた、もしまだ聴いていないとしたら、是非音の一つ一つを耳で分解しながらじっくり聴いて頂きたい。既に聴いたあなたは、音の良いヘッドフォンで、出来るだけ音を大きくして、今一度このgrooveを味わって頂きたい。

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